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[2023-45]日本でココだけ! 海洋開発科


1 防波堤や岸壁は、どのように作るのでしょう?

 海岸は、荒波が押し寄せたり水深が浅かったりして、そのままでは港として使うことができません。そこで、人工的に防波堤や岸壁を築いて港を作り、船舶が安全に入出港したり停泊・係留したりできるようにします。この防波堤ぼうはてい岸壁がんぺきは、どのように作っているのでしょう?

2 地上における土木工事

 一般的な地上における土木工事の例は、次とおりです。
(1)地面を掘削くっさくして岩盤を露出させたり捨石すていしを均一の高さに敷き詰めたりして、地盤じばんならす。
(2)鉄筋てっきん型枠かたわくを組む。
(3)型枠にコンクリートを打設だせつ(流し込むこと)し、固まるのを待つ。
(4)コンクリートが硬化したら型枠を外し、基礎(重さを支える構造体)や躯体(建物の床・柱・壁など)のできあがり。

3 水中における土木工事

 では、海や河川かせん湖沼こしょうなどの水中における土木工事の場合は、どうでしょう?
 実は、だいたい同じことをやっています。「なぁんだ」と思ったかもしれませんが、工事する場所は水の中。空気がない上に、水深が深くなればなるほど水圧が高くなって、地上のように工事することはできません。
 したがって、人間が水中に潜って工事するためには、(魚ではないので)空気を吸える装置を身につける必要があります。

4 スキューバダイビングでは空気に限りがある

 最も身近な装置はスキューバダイビングですが、スキューバダイビングは背中のボンベ(タンク)に入った空気の量に限りがあります。
 また、「減圧症げんあつしょう」を防ぐため、水深が深くなればなるほど水面にあがってくるまでの時間を十分確保する必要があります。前述のとおり、スキューバダイビングでは背負っている空気の量に限りがあるため、浅くても、深くても(深ければなおさら)長時間潜り続けることはできません。

5 ヘルメット式・フーカー式なら空気の連続供給が可能

 一方、ヘルメット式潜水やフーカー式(マスク式)潜水は、圧縮した空気をホースで連続供給することによって長時間の潜水を可能としており、水中における土木工事に欠かすことができない潜水方法です。

6 水中土木や潜水を学べるのは、日本でココだけ!

 種市高校の海洋開発科は、水中における土木工事や潜水技術を学ぶことができる日本で唯一の学科で、全国から生徒を募集しています。
 土木工事の基礎となる測量そくりょう施工せこう、構造設計、潜水などを座学や実習を通して学び、国家資格である「潜水士」の合格を目指します。
 卒業生は、港湾こうわん土木関係の企業やサルベージ(沈没船の引き揚げ)関係の企業など、日本や世界の海で活躍しています。
 「めざせ! 世界のトップダイバー」

7 実習の様子を写真で紹介します

土木の基本「測量」実習
測量で得られたデータを、その場で関数電卓で処理します
バックホウ(車両系建設機械の一種)の操作を学んでいます
(なんと、水中専用のバックホウもあるらしい)
アーク(電弧)溶接は金属接合の基礎
ガス(アセチレン + 酸素)を使うと、溶接したり切断したりできます
(金属板を切り抜いてみました)
陸上で溶接するのは当たり前
水中溶接・水中溶断の実習も行います
潜水の手始めにシュノーケルで素潜り(水深5m)
イルカを真似てバブルリングを出してみました
(バブルリングは、実習項目ではありません!)
続いて、スクーバダイビング(水深3m)
水中で機材を着脱する実習を行っています
(これができれば、エアー切れでも心配ない!)
ヘルメット式潜水服で余裕のポーズ(水深5m)
このあと、水深10mまで潜りました!
いよいよ潜水作業実習船「種市丸」(43トン)で海に出ます
「種市丸」には海底ソナーが装備されていて、海底の起伏が手に取るようにわかります